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とある漢の日常



下から突き上げるような揺れと建物が軋む音で目を覚ました。


『またか。』


慣れとは恐ろしいもので、この揺れも日常化しつつある。
初めての時はさすがに慌てたが。

その日以来、俺は会社で寝泊まりしている。幸い家は被害が無かったことと、気ままな独り者は会社にとっていろいろと都合がいいようだ。

今日も会社の壊れた箇所を修復しつつ時間を見つけて営業に出る。

『さぁ行くか。』

残りのコーヒーを飲み干し立ち上がる。

『苦ぇ。』

覚えたてのコーヒーはまだ苦い。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



相変わらず会社に寝泊まりしている俺だが決して下っ端というわけではない。
いわゆる中間管理職というやつだ。
身体が大きく体力もある俺は力仕事を率先してすることもあり社内での評判はなかなかだ。
物資が不足する中、優先的にコーヒーが飲めるのも日頃の行いってやつだ。

最近コーヒーの美味しさが分かってきた気がする。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



困ったことになった。
うちの部署にOさんという女性がいるのだが、本社の営業方針でOさんを中心とした戦略をとっていくらしい。
急にどうした。
Oさん曰く
『私、手を出すの早いから。』
なんのこっちゃ。

それはまぁ置いといて、何が困ったってOさんコーヒーめっちゃ飲む。
噂じゃ社長がキャリアを一人入れるみたいだし、その人もかなりのコーヒー好きらしい。
おいおい俺の分残しといてくれよ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



噂のキャリアがやって来た。
どんなやつかと思っていたがまさか女性とは。
なんというかTHE・キャリアウーマンという感じ。
頑張って『Yさんコーヒー好きなんですか?』って聞いてみたけどシカトされた。
怖えぇ。
役職的にはには俺と同じらしい。
勘弁してくれ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



圧巻。
まさに圧巻。
YさんとOさんのタッグは営業でも会議でも結果を出し一躍うちのメイン戦力となった。
俺も負けじと仕事に力が入る。
心強い仲間を得て、相乗効果的に社内が盛り上がっている。
Yさん少し頑張り過ぎな気もするが大丈夫だろうか。

一仕事終えてのコーヒーは美味い。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



Yさんの活躍はやはり他社から見ても脅威らしい。
他社の営業もあの手この手を使い、まずはYさんを落としにくる。さすがのYさんも疲労困憊だ。
『すまんが守ってやってくれ。』
分かってますよ社長。
身体を張るのは俺の仕事だ。
冷たいコーヒーとは裏腹に心に熱い火が灯った。



その日以降、俺はひたすら身体を張り続けた。そのかいあってYさんも元気を取り戻し、いままで以上の活躍をみせた。


そんな日々を送るうち、二人の距離が縮まるのは至極当然のことだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



『明日から君とYさん、1週間お休みね。』


大きな仕事を片付けた翌日、俺とYさんはこの社長の一言に固まっていた。

『え?いや、しかし明日からの営業や会議が......』

社長はそう言う俺を右手で制して言う。

『幸い皆の協力もあってだな、1週間ぐらいなら大丈夫だろう。たまにはゆっくり温泉にでも行ってこい。』

そう言って社長は封筒を俺に押し付けて

『Yさんを誘ってやれ。』

と小声で耳打ちして去っていった。


封筒の中には温泉宿の宿泊招待券。


ちょっとこれどーすんの!?




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



翌日。

俺とYさんは温泉宿の前にいた。



あのあと俺はスマートにYさんを誘い.....とはならなかった。




『その封筒なんですか?』

そう言うとYさんは素早く俺の手から封筒を奪い、中を確認。

『温泉の宿泊招待券ですか?』

『いや、それは、社長g『誰か一緒に行く予定ありますか?』

『え?いや、ないけど.....。』

『私でいいですか?』

『ほぇ!?』

『では明日9時に集合で。』



そう畳み掛けると、さっさと行ってしまった。


怖えぇ。
有無を言わさぬ迫力があった。
いや、誘うつもりだったけど!
嬉しいけどね!

去っていく後ろ姿で顔は見えなかったけど耳が真っ赤だったなぁ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



『コーヒーでも煎れるね。』


通されたのは景色もよく、なかなかいい部屋だった。
ここまで来た以上、腹を括ろう。
せっかくだ。楽しもう。
ひとっ風呂浴びたあと、俺はコーヒーを煎れることにした。




『はい、どうぞ。』

『..........苦い。』

『.....けど.....美味しいです。』

『だろ?コーヒーも人生も苦いぐらいがちょうどいいんだよ。』

『よくわかりません。』

そう言って少し笑った。


時刻は夕暮れ。
コーヒーの香りが漂う部屋に心地よい風が吹いていた。


それからYさんはぽつりぽつりと話はじめた。


キャリアとしてこの会社に入ってきて、周りの期待に応えようと頑張ってきたこと。
でもホントは自信なんて全然なかったこと。
そんな中、俺が身体を張って守ってくれて嬉しかったこと。

そして、実はこの温泉は仲良くなるきっかけを作りたくてYさんから社長にお願いしたということ。

そこまで言うとYさんは耳まで真っ赤にして黙ってしまった。


わかってる。
ここから先は俺が言わなきゃな。


『Yさん、俺も―――――』










その時。
俺の携帯が鳴りはじめた。

誰だよ!いま大事なとこだったのに!





社長からだ。

うわー嫌な予感しかしねぇ。





『........はい。』

『お楽しみのところすまん!こちらの手違いでマッチングに入ってしまった!休暇は終わりだ!帰って来てくれ!頼むぞ!』




そう言うと電話は一方的に切られた。

まじかよ......。




Yさんは既に帰り支度を始めている。


『短い休暇だったなぁ。』

『あら?コーヒーも人生も苦いぐらいがちょうどいいんじゃなくて?』


Yさんが悪戯っぽく笑う。

『そうだな。』

釣られて俺も笑う。

『あと、私が弓使いだからYってちょっと安直すぎません?』

『そう?それを言うなら俺なんて名前すら呼ばれてすらないぜ?じゃあ行こうかAQ。』

『頼りにしてますわBK。』





立ち上がる二人。
既に戦士の顔になっていた。





――いざ、戦場へ――










~fin~





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

























小説なんて思いつきで書くもんやないね!涙









ではまた。


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